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中国最新法令

中国最新法令速報 No.436(「市場参入ネガティブリスト(2025年版)」等)

Ⅰ. 重要法令等の解説

1.「市場参入ネガティブリスト(2025年版)」

「市场准入负面清单(2025年版)」
国家発展改革委員会・商務部・国家市場監督管理総局 2025年4月16日公布、同日施行

執筆担当:柴 巍五十嵐 充

「市場参入ネガティブリスト(2025年版)」(以下「本ネガティブリスト」という。)は、「市場参入ネガティブリスト(2022年版)」1(以下「2022年ネガティブリスト」という。)を改正したものであり、本改正は、基本的に参入条件を引き下げる方向で、既存の管理措置を削除しているが、一部の新しい分野に関する管理措置を取り入れている部分もある。なお、本ネガティブリストにおいては、既に行われた法令の改正に基づいて既存の管理措置を削除し、制定された新法令に基づいて新しい管理措措置を取り入れるものであり、基本的に新たに規制を作るものではない。

市場参入ネガティブリストとは、中国国内における投資経営の参入を禁止又は制限する業種、分野及び業務等を列挙したリストである。これは内資・外資に共通して適用され、記載のない業種、分野、業務等は、内資・外資を問わず法に基づき平等に参入することができる(1条)。但し、外資による中国における活動については、別途、外資に対してのみ適用される「外商投資参入特別管理措置(外資ネガティブリスト)」及び「自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置」(自貿区ネガティブリスト)等も確認する必要がある。

本ネガティブリストは、2022年ネガティブリストと比べると、参入禁止事項については変更がないが、参入許可事項については、従来の管理措置を一部削除した一方、制定された新法令に基づいて新しい分野の管理措置を取り入れた。具体的に、全国的な範囲で適用される管理措置は2022年ネガティブリストと比べて486条から469条へと削減され、地方にのみ適用される管理措置は2022年ネガティブリストと比べて36条から20条へと削減された。主な変更点は以下のとおりである。

(1)全国的な管理措置の削除
参入条件を引き下げ、市場の活力を引き出すため、本ネガティブリストは、①公印作成業特種業種許可、②コンピュータ情報システム安全専用製品の販売許可、③テレビドラマ(テレビアニメを含む)制作単位の設立の審査認可、④薬品卸売・小売企業の設立準備の審査認可、⑤薬品及び医療機器のインターネット情報サービスに従事する場合の審査、⑥医療単位が放射性薬品(一、二類)を使用する場合の許可、⑦新型電信業務を試験的に行う場合の審査確認、⑧草木の種の輸出入許可、⑨増値税専用インボイスの印刷資格の制限等の管理措置を削除した。

(2)地方的な管理措置の削除
地域間の市場障壁を除去するために、①交通物流の経営許可(江蘇)、②貨物輸送代理の取扱の許可(江蘇)、③車両リースサービス企業の経営資質に関する許可(各関連地区)、④産業系金属くずの買取業務の許可(雲南)等の管理措置を削除した。
また、一部の地方のみに存在していた①船舶の設計、建造、修理の資質に関する許可(各関連地区)、②酒類生産、卸売、小売の許可(各関連地区)等の管理措置を削除し、参入方式を全国範囲で統一した。

(3)新しい分野の管理措置の取り入れ等
本ネガティブリストは、制定された新法令又は改正された法令に基づいて新しい分野の管理措置を取り入れた。具体的に、①「無人操縦航空機運営管理条例」に基づいて、民用無人操縦航空機運営合格証の審査認可(超小型無人操縦航空機を除く)(49項目)を、②「たばこ専売法実施条例」に基づいて、電子たばこ等の新型たばこ製品の製造、卸売、小売業務の許可(18項目)を取り入れた。
また、「薬品管理法」及び「医療機器監督管理条例」に基づいて、薬品及び医療機器のネット販売に関する参入条件を更に規範化(100項目)し、「工業製品生産許可証管理目録の調整完備に関する決定」に基づいて、重要工業製品許可証に関する変更点(従来の10種類から14類27種に変更されたこと)を反映した(31項目)。 
 

Ⅱ. 注目法令等の紹介

1.「民営経済促進法」

「中华人民共和国民营经济促进法」
全国人民代表大会常務委員会 2025年4月30日公布、2025年5月20日施行

執筆担当:張 超塩崎 耕平

本法は、中国の各種の所有制経済間の発展の不均衡と不十分さが顕著であり、中国の民営経済2が、新たな発展の機会に直面する一方で、市場参入、資源の獲得、サービス供給の面で多くの障害や課題に直面しており、自身の革新発展能力にも脆弱な部分があることを背景に、民営経済の発展に特化した基本法として制定され、民営経済分野の顕著な課題を解決し、安定、公平、透明、予測可能な発展環境を構築することにより、民営経済の発展を促進することを目的とするものである。本法の主な内容は以下のとおり整理できる。

 

  1. 公平競争の保障について:本法は、国や各レベルの地方政府に対して、民営経済組織による市場参入と市場競争への参加の平等の確保を要求するとともに、民営経済組織による各種生産要素、公共サービス資源の平等な使用と各種政策の制定・実施における平等な扱いの確保を要求する(10~15条)。
     
  2. 投資・融資環境の適正化について:本法は、民営経済組織による国の重大戦略・重要工事への参加と新興産業・重点分野での投資に対する支援を明確にした上で、各レベルの地方政府及び金融機関に対して、効率的かつ便利な行政サービスの提供や金融サービスの水準と利便性の向上等を要求する(16~23条)。
     
  3. 科学技術革新の支援について:本法は、民営経済組織が、国の科学技術や重大技術の難題を解決する任務に参加すること、共通基盤技術の研究開発やデータにより構成される市場の構築に参加することに対する支援を明確にした上で、民営経済組織による高度技能人材の育成と使用を推奨し、技術革新の成果に対する国による知的財産権保護を強化するとしている(27~33条)。 
     
  4. サービス保障の強化について:本法は、国や地方政府に対して、有効な政府・企業の意思疎通の仕組みの構築、明確かつ利便性のある政策・サービスの提供と法執行に対する監督体制の整備等を要求するとともに、信用失墜懲罰・信用回復制度の健全化、紛争の多元的解決体制の確立や海外での利益保護体制の整備等を定める(44~57条)。
     
  5. 権益保護の強化について:本法は、民営経済組織とその経営者の人身の権利、財産的権利及び経営自主権に対する保護を強調した上で、行政強制措置、財産収用・公用使用措置及び他区域での法執行の規範化、政府機関による政策的な契約義務の履行と代金支払の保障等を明確にするとしている(58~70条)。

(全78条)

2.「知的財産権侵害刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する解釈」

「最高人民法院、最高人民检察院关于办理侵犯知识产权刑事案件适用法律若干问题的解释」
最高人民法院、最高人民検察院 2025年4月23日公布、2025年4月26日施行

執筆担当:高 玉婷井村 俊介

本解釈は、刑法改正(十一)3における知的財産権侵害犯罪に係る改正を踏まえて、知的財産権侵害犯罪の認定基準を統一し、その規制を強化している4。本解釈の施行後、旧解釈5は、同時に廃止される(31条)。旧解釈からの改正点のうち重要なものは以下のとおりである。

まず、刑法改正(十一)は登録商標冒用罪の保護対象範囲を役務商標まで拡大したため、本解釈は、役務商標に係る登録商標冒用罪の犯罪認定基準を明確にした。また、その他の一部の知的財産権侵害犯罪の認定基準を調整した。詳細は下表のとおりである。例えば、「登録商標標識の不法製造、不法製造登録商標標識販売罪」(刑法215条)は、法文上「他人の登録商標標識を偽造し、もしくは無断で製造し、又は偽造され、もしくは無断で製造された登録商標標識を販売し、情状が重い者は、3年以下の有期懲役に処し、罰金を併科し、又は罰金を単科する。」と規定されており、「情状が重い」ことが犯罪の構成要件となっている。本解釈では、「情状が重い」の認定基準を引き下げたことで、より軽微な事例においても同罪に該当することとなり、厳罰化が図られている。
 

罪名旧解釈本解釈
(役務商標)登録商標冒用罪(刑法213条)「情状が重い」の主な基準:違法所得金額6が5万元又は3万元(2種類以上の登録商標を冒用した場合等7)以上(3条2項)
登録商標標識の不法製造、不法製造登録商標標識販売罪(刑法215条)「情状が重い」の主な基準:標章の数が2万件以上、違法所得金額が3万元以上、又は不法経営金額が5万元以上「情状が重い」の主な基準:標章の数が1万件以上、違法所得金額が2万元以上、又は不法経営金額8が3万元以上(6条)
特許冒用罪(刑法216条)「情状が重い」の主な基準:特許権者に50万元以上の直接の経済的損失をもたらした「情状が重い」の主な基準:特許権者に30万元以上の直接の経済的損失をもたらした(10条)
権利侵害複製品販売罪(刑法218条)「違法所得金額が巨額」の基準:10万元以上「違法所得金額が巨額」の基準:5万元以上(14条)


なお、本解釈は、営業秘密侵害罪に係る電子的侵入行為(16条)、中国国外のための営業秘密窃取等の行為(20条)の認定等について新たな規定を設けており、知的財産権侵害犯罪の罰金の上限を違法所得金額の5倍から10倍までに引き上げた(25条)。

(全31条)

Ⅲ.その他の法令等一覧

2025年4月28日から2025年5月11日までの期間に公布された主な法令等の一覧は以下のとおりである(上記にて取り扱った法令等を除く。)。
 

  1. 「銀行業金融機関董事(理事)及び高級管理職就任資格管理規則」
    (原文:银行业金融机构董事(理事)和高级管理人员任职资格管理办法)
    (国家金融監督管理総局、2025年4月22日公布、2025年6月1日施行)
     
  2. 「営業秘密保護規定(意見募集稿)」
    (原文:关于公开征求《商业秘密保护规定(征求意见稿)》意见的公告)
    (国家市場監督管理総局、2025年4月25日公布、2025年5月25日まで意見募集)
     
  3. 「植物新品種保護条例(2025年改正)」
    (原文:中华人民共和国植物新品种保护条例(2025年修订))
    (国務院、2025年4月29日公布、2025年6月1日施行)
     
  4. 「伝染病予防治療法(2025年改正)」
    (原文:中华人民共和国传染病防治法(2025年修订))
    (全国人民代表大会常務委員会、2025年4月30日公布、2025年9月1日施行)
     
  5. 「仲裁法(改正草案第二次審議稿)」
    (原文:中华人民共和国仲裁法(修订草案二次审议稿))
    (全国人民代表大会常務委員会、2025年4月30日公布、2025年5月30日まで意見募集)
     
  6. 「原子力法(草案第二次審議稿)」
    (原文:中华人民共和国原子能法(草案二次审议稿))
    (全国人民代表大会常務委員会、2025年4月30日公布、2025年5月30日まで意見募集)
     
  7. 「生態環境法典(草案)」
    (原文:中华人民共和国生态环境法典(草案))
    (全国人民代表大会常務委員会、2025年4月30日公布、2025年6月15日まで意見募集)
     
  8. 「特許審査指針改正草案(意見募集稿)」
    (原文:关于就《专利审查指南修改草案(征求意见稿)》公开征求意见的通知)
    (国家知識産権局、2025年4月30日公布、2025年6月15日まで意見募集)
     
  9. 「中国人民銀行業務分野データ安全管理規則」
    (原文:中国人民银行业务领域数据安全管理办法)
    (中国人民銀行、2025年5月1日公布、2025年6月30日施行)
     
  10. 「日本向けに輸出される飼料用稲わらの検査検疫監督管理規範(意見募集稿)」
    (原文:关于《输日饲用稻草检验检疫监督管理规范(征求意见稿)》公开征求意见的通知)
    (税関総署、2025年5月8日公布、2025年6月8日まで意見募集)

  1. 本ニュースレターNo.374(2022年4月28日発行)をご参照ください。
  2. 本法77条によれば、民営経済組織とは、中国国内に設立された、中国国民が持分支配し、又は実質的に支配する営利法人、非営利法人、及び個人事業主、ならびにこれらの組織が持分支配し、又は実質的に支配する営利法人、非営利法人を指すとされている。
  3. 本ニュースレターNo.345(2021年1月29日発行)をご参照ください。
  4. 最高人民法院、最高人民検察院が2025年4月24日に開催した「『知的財産権侵害刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する解釈』の公布等に関する記者会見」
  5. 最高人民法院、最高人民検察院による「知的財産権侵害刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関する解釈」、「知的財産権侵害刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関する解釈(二)」、「知的財産権侵害刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関する解釈(三)」及び「著作権侵害刑事事件の処理における録音・録画製品に係る関連問題に関する回答」をいう。
  6. 行為者が知的財産権侵害製品を売却した後に取得し、及び取得することができたはずの全ての違法収入から原材料、売却製品の仕入代金を控除したもの。役務提供の場合には、当該役務において使用した製品の仕入代金を控除する。サービス料、会員費又は広告費等を収受する方式により利益を得ている場合には、収受した費用は「違法所得」にあたると認定しなければならない。(28条)
  7. また、本解釈では、商品か役務かを問わず、2年以内に刑法213条から215条に定める行為を実施して刑事処罰又は行政処罰を受けた後に再びこれを実施した場合には、2種類以上の登録商標を冒用した場合と同様に扱われることも明確化された。(3条1項及び2項)
  8. 行為者が知的財産権侵害行為を実施する過程において、製造し、貯蔵し、輸送し、販売した権利侵害製品の価額(28条)
     
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