日本企業の活発な外国への進出に伴い、企業が現地の特殊な法制や行政権の行使に悩まされる事例が増加しています。従来、これらの投資や貿易に伴う障壁は新興国ビジネスにつきものの、いわゆる現地「カントリーリスク」として受け入れるしかないと考えられがちでした。しかし、実はこれらの障壁には、WTO協定、各種EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)、投資協定等の通商法を活用することにより解決が可能なものが数多く含まれています。
例えば、近時、各国でローカルコンテント要求や技術移転要求といった国内産業保護・育成措置が目立つようになっています。こうした措置の中にはWTO協定、EPA・FTA等に違反する疑いのあるものも多く、これらの国際ルールを梃子に現地政府に改善を求めたり、場合によっては日本政府に働きかけてWTOに提訴するといった対応も考えられます。また、投資受入国の政府が外国投資家の利益を不当に損なうような措置を発動した場合、投資協定に基づく投資仲裁を申し立てることも考えられます。
さらに、近年、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)、日EU経済連携協定(日EU EPA)、日英包括的経済連携協定(日英EPA)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定といった大型のEPA・FTAが相次いで締結されています。これらのEPA・FTAに基づく特恵関税(優遇関税)の適用や新しい通商・投資ルールを活用することにより、日本企業にとって有利な競争環境を実現することが可能です。
一方で、ここ最近、日本を含む各国で、安全保障上の懸念や人権問題を理由として、あるいは先端技術分野における優位性・不可欠性の確保といった「経済安全保障」の観点に基づき、輸出入規制や各種の制裁措置が多用される傾向が見られます。こうした措置は複雑・難解なものが多く、また規制内容が急速に変化することも多く、その対応には高度の専門的知見が求められます。また、仮に違反してしまった場合には、刑事罰、巨額の制裁金、企業のレピュテーションへのダメージなど大きなリスクを伴います。日本法はもちろん、各国の専門家と連携し、各国の政策のトレンドを見極めながら機動的・戦略的に対応することが重要です。
当事務所では、上記のような通商法や経済安全保障に関する様々な問題について、これまでの豊富な実務経験に最先端の専門的知識を組み合わせ、隣接分野の専門家や行政機関・海外法律事務所等との緊密な連携に基づき、局面に応じた最適なサポートを提供できる体制を整えています。
日本企業による海外取引・海外進出や外国企業による日本でのビジネスに伴う通商法上の問題について、当該分野に関する豊富な知見を有する弁護士が、WTO協定、EPA・FTA(CPTPP、日EU EPA、日英EPA、RCEP)等の通商ルールの観点から、法的・戦略的な助言を提供しています。日本政府や外国政府との折衝のサポートも行います。WTO紛争解決手続についても、国際機関や関係省庁において勤務経験を有する等、我が国有数の経験と実績を有する弁護士を擁しています。
・ 各国の貿易・投資措置のWTO協定等の国際ルール整合性に関する法的助言
・ 現地政府や日本政府との交渉のサポート
・ 関税や通関手続に関する助言
・ EPA・FTAに基づく特恵関税や原産地規則に関する法的助言
・ 政府調達に関する法的助言
・ WTO紛争解決手続対応
投資協定とは、投資国と投資受入国との間で締結される協定をいい、投資及び投資財産に関する内国民待遇義務、公正・衡平待遇義務、収用に対する正当な補償といった投資自由化及び投資保護に関するルールのほか、投資家が直接投資受入国の政府を直接相手取って投資仲裁等の紛争解決手続(Investor-State Dispute Settlement(ISDS))の申立てを行うための枠組みを定めています。当事務所では、投資協定のルールやISDSに精通した弁護士を擁しており、各国政府による投資規制その他日本の投資家・投資財産に影響を及ぼす措置に関し、ISDS対応を含めた強力なサポートを提供しています。
・ 投資協定に関する法的助言
・ 投資仲裁等の投資家対国家紛争解決手続(ISDS)対応
外国から日本に対するダンピング(不当廉売)や補助金の交付に基づく廉価な輸出に対抗するための日本政府へのアンチダンピング関税、補助金相殺関税等の発動申請や、外国政府による日本産製品へのアンチダンピング調査、補助金相殺関税、セーフガード調査への対応をサポートします。
・ 日本政府に対するアンチダンピング調査、補助金相殺関税調査等の申請
・ 外国政府によるアンチダンピング、相殺関税、セーフガード措置への対応支援
・ 上記に関する日本政府及び外国政府との交渉サポート
日本の外為法に基づく安全保障貿易管理(輸出管理)のほか、米国輸出管理規則(EAR)をはじめとする各国の輸出・再輸出規制について、各国の専門家とも連携しながら戦略的な助言を行います。
・ 日本の安全保障貿易管理(リスト規制・キャッチオール規制等)に関し、該非判定、輸出許可申請、違反時の対応、輸出管理に関する社内体制整備、輸出管理内部規程(CP)策定等の支援
・ 米国国際武器取引規則(ITAR)、輸出管理規則(EAR)等に基づく輸出・再輸出規制に関する対応支援、違反が発覚した場合の自主申告対応の支援
・ 中国の輸出管理法、反外国制裁法その他国家安全法制に関する対応支援
・ その他各国の輸出規制対応のサポート
経済安全保障に関する関心の高まりも背景に、各国で、外資規制(対内直接投資規制)を強化する動きが顕著になっており、M&Aを含む企業の投資活動に大きな影響を及ぼしています。さらに、米国など一部の国では、対外投資規制を導入・強化する動きも生じています。加えて欧州では、M&Aや公共調達に際して外国政府等から受領している補助金に関する規制(FSR)の運用も開始されています。当事務所は、企業の投資・事業活動において、日本の外為法や個別業法に基づく外資規制・投資管理規制への豊富な対応経験を有することはもちろん、海外の事務所とのネットワークを活かして、海外当局による外資規制についてグローバルにサポートできる体制を整えています。
・ 日本の外為法・個別業法に基づく外資規制及び対内直接投資規制に関する法的助言
・ 米国の対米外国投資委員会(CFIUS)による審査その他各国の外資規制対応の支援
・ 米国等の対外投資規制に関する対応支援
・ 欧州外国補助金規制(FSR)に関する対応支援
ウクライナ情勢を踏まえたロシア・ベラルーシに対する大規模かつ広範な経済制裁をはじめ、日本を含む主要国で、経済制裁がビジネスに及ぼすインパクトが大きくなっています。これらの制裁措置は、金融制裁、貿易制裁など広範・多岐にわたることに加え、国連決議や有志国との協調に基づいて、頻繁に強化・改正が行われています。当事務所は、日本、米国、欧州等の経済制裁措置について日本有数の助言実績を有しており、日本はもちろん、各法域の専門家と連携しつつ、政策のトレンドも踏まえた正確かつ迅速な対応が可能です。
・ 日本の外為法等に基づくロシア、ベラルーシ、北朝鮮等に対する経済制裁措置への対応
・ 米国のロシア、キューバ、イラン、シリア等に対する金融制裁(OFAC規制、二次制裁を含む)、貿易制裁(EAR等)への対応支援
・ EU、英国、スイス等その他の主要法域の経済制裁に関する対応支援
当事務所では、上記のほか、経済安全保障にかかわる施策全般について、高度な知見に基づく専門的助言を提供しています。
・ 日本の経済安全保障推進法(重要物資の供給確保、基幹インフラ設備の事前審査、先端的な重要技術の開発支援、特許出願の非公開)への対応
・ 重要土地等調査法、特定秘密保護法その他、安全保障・経済安全保障に関する施策全般への対応
・ セキュリティ・クリアランス制度への対応
・ サイバーセキュリティ対応
・ 米国の政府調達規制、CHIPS法等に関する対応の支援
・ 地政学リスク・経済安全保障の観点からの企業におけるリスク管理・有事対応・契約実務等に関する支援
米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)をはじめ、近年、主要国で「ビジネスと人権」の観点からの輸出入規制が導入される例が増加しています。当事務所では、これらの輸出入規制への対応の支援も行っています。
「2050年カーボンニュートラル目標」を踏まえ、各国で環境・脱炭素に関する施策が次々に打ち出されています。これらの措置の中には、炭素国境調整(CBAM)、バッテリー等の戦略物資に関する規制・規格、電気自動車(EV)等への補助金など、国際的な競争環境に影響を与えるものも多く含まれます。当事務所では、通商法の視点も踏まえつつ、各国の施策への対応に関する戦略的助言を行っています。
通商法・経済安全保障に関する各国の措置への対応は、WTO協定など個別の条約や特定の国内法の解釈・適用のみで完結することは少なく、様々な国の様々な制度を考慮した総合的な戦略を構築することが求められます。当事務所では、これまでに、競争法/独占禁止法プラクティスグループ、M&Aプラクティスグループ、アジアプラクティスグループ、国際紛争プラクティスグループ、税務プラクティスグループ、データ・セキュリティプラクティスグループ、危機管理プラクティスグループ等、通商と隣接する分野のプラクティスグループが、海外進出時のストラクチャリング・規制対応・契約交渉・紛争解決等につき幅広いアドバイスを提供してまいりました。通商プラクティスグループの活動にあたっては、これらの隣接分野における専門家と緊密な連携をとりながら、海外に進出されるクライアントの皆様に対し実際的かつ効果的なリーガルアドバイスをご提供させていただくことが可能です。